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日本神経回路学会 オータムスクール

ASCONE2014 『脳内時間』

Autumn School for Computational Neuroscience

2014年10月31日(金)〜 2014年11月3日(月) かたくら諏訪湖ホテル(JR上諏訪駅 徒歩10分)

ポスター(JPG:4.8MB)


Lecture I 『主観的に体験される時間と客観的に観察可能な脳内の神経活動の時間の関係を考える』
講師:西田 眞也(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)

Lecture II 『数理が指し示す脳内時間の謎』
講師:酒井 裕 (玉川大学 脳科学研究所)

Lecture III 『報酬予測に基づく意思決定と学習、そこにおける時間の役割』
講師:中原 裕之(理化学研究所 脳科学総合研究センター)

Lecture IV 『計時と予測の神経機構』
講師:田中 真樹(北海道大学大学院 医学研究科)

Lecture V 『神経回路で時間を表現するには?』
講師:山崎 匡 (電気通信大学大学院 情報理工学研究科)

Lecture VI 『こころの「現在」の科学』
講師:北澤 茂 (大阪大学大学院 生命機能研究科)

1講師1トピックについて、以下のスケジュールで行っていきます。
  1. 「基礎講義」(約1時間)
    問題意識までの導入を行います。 例えば、不思議な脳の現象などを紹介し、 その問題を考えるための材料を提供します。
  2. 「グループ討論」(約2〜3時間)
    小グループに分かれて、提示された問題について自ら考えながら、 チューター、講師らと共に討論します。 最終的にそのグループの意見として全体に発表できるように、 意見をまとめていきます。
  3. 「グループ発表」(約30分)
    各グループで行った討論の結果を代表者が全体に発表します。
  4. 「発展講義」(約30分)
    講師による解説を行います。

10月31日

12:30- 受付 (昼食を済ませてから集合してください)

13:00-13:15 開催の辞

Lecture I
 『主観的に体験される時間と客観的に観察可能な脳内の神経活動の時間の関係を考える』

講師:西田 眞也(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)

概要:外界で二つのイベントがある順番で知覚されたと観察者が報告したとき、脳の中では何が起こっているのだろうか。それぞれのイベントによって誘発された脳内信号から、脳はどのようにイベントの時間関係を計算するのだろうか。さまざまな心理現象から、主観的な時間が脳内の神経活動の時間構造を直接反映したものでは無いことが分かってくる。

13:15-14:15 基礎講義

14:15-16:15 グループ討論

討論課題:
ある時間順序判断の心理実験で、t=0に光フラッシュを、t=+50msに音クリックを提示したとき、観察者は音クリックが先に提示されたと回答したとします。このような光と音のイべントの知覚が観察者の脳内に成立した物理的な時間を測定する実験方法を提案して下さい。

16:15-16:45 グループ発表

16:45-17:15 発展講義

18:00-19:00 夕食

19:00-21:00 Welcome party

21:00-24:00 Poster Session

11月1日

Lecture II 『数理が指し示す脳内時間の謎』

講師:酒井 裕 (玉川大学 脳科学研究所)

脳内の時間特性は、私たちが常日頃から身近に経験しているが故に、様々な行動実験が明らかにする特性を一見当たり前に思えてしまう。しかし、そのような行動を実現する脳内の計算を数理的に表現しようと試みると、不思議な特性であることが浮かび上がることがある。この講義では、タイミング予測や時間再生課題などにおける時間の長さと誤差との関係(Weber則)と、将来報酬の価値付けに関わる時間割引特性に焦点を絞り、脳内時間の不思議を解説し、そのメカニズムの可能性を一緒に考えたい。

9:00 - 10:00 基礎講義

10:00-12:00 グループ討論

数理パズル課題:
試行dに関して指数割引、連続経過時間Dに関して、双曲割引となるような主観的価値Uを表してください。
討論課題:
Weber則を実現するような尤もらしい計時メカニズムを考えてください。

12:00-13:00 昼食

13:00-13:30 グループ発表

13:30-14:00 発展講義

Lecture III 『報酬予測に基づく意思決定と学習、そこにおける時間の役割』

講師:中原 裕之(理化学研究所 脳科学総合研究センター)

ASCONEの今年のテーマである「脳内時間」について、価値意思決定における時間の役割の視点から考える。この約20年の間、報酬や利得などの予測、つまり「価値」に基づく意思決定(価値意思決定)の脳情報処理の解明には大きな進展があり、脳計算モデルが最も活躍している分野である。その数理的な基礎は、マルコフ過程における逐次選択のオンライン学習理論(強化学習)である。この強化学習理論の枠組みにおける「時間」が脳内時間とどう関連づくのかについて一緒に考えたい。

15:00-16:00 基礎講義

16:00-18:00 グループ討論

討論課題:
  • 我々が脳機能を語る中で「時間」と言っているのは何なのでしょうか?
    e.g., {perception, decision, motor}, {past, current, future}, {prospective, retrospective},{~50ms, ~250ms, ~1sec, ~1hour, ~1year, ~10years, a life long, history; (mental time travel)}, {[brain areas] cerebral cortex, cerebellum, basal ganglia etc}, {[neuronal scales], inside-cell, a neuron, neurons, areas etc}, {production, estimation, re-production etc}, {order, cardinal, real}, {timing, interval}, {in/out, superimposed, competitive/cooperative}, {external/internal}, {periodic, vs non}, {synchronous, vs non}, {subjective vs objective; (how many subjective? what are really “objective”?)}
    • これらの問題を単純化できるでしょうか?
    • 「時間」を純粋に「時間」だけの問題として研究できるのでしょうか? stateや他の機能と分離して議論できるのでしょうか?
  • 時間に関する “great project” は何でしょうか? 生涯かけてやっていく研究を10日で決めなければいけないとしたら、何にかけますか?

18:00-19:00 夕食

19:00-19:30 グループ発表

19:30-20:00 発展講義

21:00-24:00 ポスターセッション

11月2日

Lecture IV 『計時と予測の神経機構』

講師:田中 真樹(北海道大学大学院 医学研究科)

時間の情報は日常生活に不可欠である。とくに、行動制御に必要となる数百ミリから数秒の時間知覚には、大脳に加えて皮質下の大脳基底核、小脳が関与すると考えられている。本講義では、脳がどのように時間を表現していると考えられているか概説し、実際にサルが時間経過をモニターし、視覚刺激のタイミングを予測している際の脳各部の神経活動を紹介する。これらを通じ、今後の研究の展開について議論したい。

9:00 - 10:00 基礎講義

10:00-12:00 グループ討論

討論課題:
  • 基底核と小脳の信号は運動タイミングの制御にどのように使われうるか?
  • 運動タイミングに向かって漸増する活動を生成する神経メカニズムは?
  • 周期的な刺激の刺激欠落を検出する神経メカニズムは?
  • 周期的な刺激に追従する小脳の信号はどうやって予測誤差の信号に変換されるのか?
どのようなものが考えられ、どうすれば検証できるか?

12:00-13:00 昼食

13:00-13:30 グループ発表

13:30-14:00 発展講義

Lecture V 『神経回路で時間を表現するには?』

講師:山崎 匡 (電気通信大学大学院 情報理工学研究科)

およそあらゆる感覚にはその元となる物理的対象があり、処理する器官があり、それを表現する脳部位が存在する。例えば視覚においては物体に反射した光であり、眼球であり、第一次視覚野においてエッジとして表現される。同様に聴覚においては空気の振動であり、鼓膜と蝸牛であり、第一次聴覚野において周波数成分として表現される。それに比べて時間感覚というのは、具体的な物理対象があるわけでも、それを処理する特別な器官があるわけでもなく、むしろ内的な概念のような存在に思える。そのような得体の知れないものを脳がどのように表現しているかは未だ謎であるが、理論は、特に時間を表現する神経回路モデルはこれまでに多数提案されてきた。本講義ではそれらのモデルとそのモデルの元になった様々な過去の実験について紹介し、そのモデルの背景にある原理について議論する。

15:00-16:00 基礎講義

16:00-18:00 グループ討論

討論課題:
  • Bugmann(1998)モデルを試してWeber則を確認してみましょう。
  • なぜこのモデルはWeber則を満たすのか、考えてください。

18:00-19:00 夕食

19:00-19:30 グループ発表

19:30-20:00 発展講義

21:00-24:00 ポスターセッション

 
 
 
 
 
 
 

11月3日

Lecture VI 『こころの「現在」の科学』

講師:北澤 茂 (大阪大学大学院 生命機能研究科)

私たちが共有する現在・過去・未来に関する時間の意識を「こころの時間」と呼ぶことにしよう。こころの「過去」や「未来」は大きな時間の幅を持っている。それに引き換えこころの「現在」の時間幅は短い。しかし、物理学の「現在」とは異なり、ある程度の幅を持っている。こころの「現在」の幅はどれくらいあるのだろうか。また脳はどのようにして、こころの「現在」を構築しているのだろうか。1秒以内の短い時間帯で生じる錯覚を手がかりに、こころの「現在」構築のメカニズムについて考察してみたい。

9:00 -10:30 基礎講義

10:30-12:30 グループ討論

討論課題:
  • ランダムに方向を変えるフラッシュラグの結果(Whitney & Murakami 1998) はdelay説とpostdiction説どちらでよく説明できるか?
  • 仮現運動で色は突然変わる。一方、形は徐々に変わる。この違いはなぜ生じたのか?
  • Double flip modelをデータにfittingしてみよう。 最小2乗誤差でfittingすると最尤推定とどれくらい変わるだろうか?モデルfittingの思想としてこの例ではどちらがすぐれているか?
  • 腕を交差したときのSomatosensory saccadeが曲がる確率とonset latencyの関係を 非交差の場合のデータも活用して、モデル化してみよう。
  • 先行研究をひねってみよう。
    例: 腕交差の代わりに、棒を交差して時間順序を判断する。
    何がさらにわかるのかを明確に意識して、研究提案にまとめてみよう。
  • こころの「現在」に幅があることは認めよう。では、こころの「現在」は物理学的な「現在」の脳の状態で決まるのだろうか? 言い換えると、時間が「フリーズ」した世界の人たちは何を感じているのかいないのか?

12:30-13:30 昼食

13:30-14:00 グループ発表

14:00-15:00 発展講義

Satelite Discussion

15:00 - 16:00 

解散

参加者からのメッセージ

幾谷 吉晴(奈良工業高等専門専攻科 電子情報工学専攻 1年 B3相当)

最先端の研究者の方々による講義、様々な分野の人が議論を戦わせるディスカッション、そのどれもが素晴らしく、本当に楽しかったです。

岡本 直宏(京都大学 総合人間学部 B3)

非常に密度の濃い、充実した4日間でした。私の人生の中で最も脳を駆使した4日間だったかも知れません。脳に興味を持つ様々な分野の人たちと議論を交わし、研究を志す同世代の方とたくさんお話できたことはとても刺激になりました。

谷川 洋介(東京大学 理学部 B3)

最先端の脳神経科学者からの密度の濃いレクチャーと,多様なバックグラウンドを持つ他の参加者の方々とのインテンシブなディスカッションで「脳内時間」に関する理解と興味が深まりました。新しい分野を創っていくという気概に満ちた刺激的な4日間でした。

伊藤 健史(北海道大学 医学部 B4)

2回目の参加となりましたが、今回は特に生理系以外のバックグラウンドを持つ参加者の方が多く、実験系の私にとってはこの上ない刺激を受けることができました。いただいたアイデアをよく咀嚼して、今後の研究につなげたいです。

片倉 央揮(電気通信大学 情報理工学部 B4)

様々な知見を持つ方々との意見の交換やディスカッション、最先端で活躍なさっている講師の皆様と非常に密度の高い時間を過ごすことが出来ました。自身の力量を測るいい機会にもなり、今後の糧となる充実した四日間でした。

川端 政則(早稲田大学 先進理工学部 B4)

脳科学に興味を持つ様々な分野の優秀な人々が一堂に会し、議論をしたり交流を深めたりできる絶好の機会です。前提知識を必要とせず、講義から学んだことをスタートとして議論を進めるため、誰でも議論に参加できます。同じ講義を受けていても、バックグラウンドが異なると意見は変わります。様々な意見を聞き、また自分の意見も言って批判を受けることは自分の思考を広げるのに最適だと思います。是非また参加したいです。

長野 祥大(慶應義塾大学 環境情報学部 B4)

問を立てて検証するための実験を考えるプロセスを学ぶことができるという点において、ASCONEほど学びのある貴重な機会は今までありませんでした。朝から晩まで参加者との議論も絶えず、濃密な4日間でした。理論に明るくない人にとっても実りの多い会だと思います。

坂本 浩隆(東京大学 新領域創成科学研究科 M1)

三泊四日の期間中、本当に寝ても覚めても科学のことだけを共に考えて話し合っていられる環境で、他では得難い経験をさせていただきました。講義と議論で「脳をかき回して」みたい方、参加されるときっと良い刺激になると思います。

佐々木 彰一(東京大学 教育学研究科 M1)

ASCONEでは、世界で活躍されている先生方、志を共にする学生メンバーと、様々なディスカッションをすることができます。自分の知見を広げる意味でも、仲間を作る意味でも、とても有意義な会だと思うので、ぜひ応募してみてください。

佐藤仁是(北陸先端科学技術大学院大学 M1)

あり得ないくらいの刺激と、つながりを感じた4日間でした!専門が千差万別なので、ASCONEじゃないと話せないし聞けない話だらけで感動です。ここは、自分を見つめ直す事のできる最高の場所かもしれません。

吉田 梨紗(奈良女子大学 人間文化研究科 M1)

理論系である私は、脳に関する実験をしている方々とお話をするのは初めての機会でした。今まで脳科学の一端しか見えていませんでしたが、興味深い実験の数々を聞くことができ、ASCONEの講義やグループ討論を通して新しく知識を得て、一つ成長出来たように思います。

運営

鮫島 和行(玉川大学 脳科学研究所)
酒井 裕 (玉川大学 脳科学研究所)
田中 宏和(北陸先端科学技術大学院大学)
筒井健一郎(東北大学 生命科学研究科)
山本 慎也(産業技術研究所)
渡辺 正峰(東京大学 工学系研究科)

顧問

丹治 順 (東北大学包括的脳科学研究・教育推進センター)
銅谷 賢治(沖縄科学技術大学院大学)
 

主催

共催